悲しいお知らせ
去る6月14日、クリスティーヌ・ムレ夫人から財団に「主人が肺がんを患っており、今秋までは持たないかも知れない」と慄然とするメールが送られてきました。それからわずか6日後、博士は家族に見守られながら帰らぬ人となりました。
今から8ケ月前の東京で、私どもがムレ博士に本田賞を授与し、博士とともに受賞の喜びを分かち合えたのはとても光栄なことでした。博士は、本田宗一郎の言葉『技術は謙虚で血が通い、人間を含む全ての自然環境に配慮しないといけない』に共感されていました。博士ご自身も『手術者は、エコシステムである人間の身体に宿る自然の摂理を侵してはならない』という哲学を持たれており、「私もホンダファミリーの一員です」と話して下さいました。本田賞授与式の後、ムレ博士ご夫妻が京都の秋を楽しまれていたのが、昨日のことのように思い起こされます。
博士は、本田賞受賞後も病を押して日本へ再来日されるなど、その卓越した理論と技術を世界に普及されるべく、精力的に活動されていたと伺っております。博士が道を切り拓き、遺された『腹腔鏡手術』の哲学と技術は、これからも世界中で広く実践され、多くの患者の痛みを和らげてくれるでしょう。
私どもは、ムレ博士の人懐こい笑顔を思い出すたびに、深い悲しみに包まれております。博士のご冥福をお祈りすると共に、奥様をはじめご遺族の皆様が、少しでも早く悲しみから立ち直られますことを心からご祈念申し上げます。
(財)本田財団 理事長
川島廣守 |