オープニングムービー|基調講演・記念講演|パネルディスカッション
シンポジウムは当財団理事である小島明氏(公益社団法人日本経済研究センター参与)による基調講演を皮切りに、これまでの本田賞受賞者3名が登壇。私たちが提唱するエコテクノロジーの概念になぞらえた記念講演を行いました。
オーケ・E・アンダーソン博士(第16回受賞者)がParadigm Shift(パラダイム・シフト)、ラジ・レディ博士(第26回受賞者)がInnovation(イノベーション)、そしてデニ・ルビアン博士(第33回受賞者)がLife Frontier(ライフ・フロンティア)をテーマに、経済学、コンピュータ科学、医学という全く異なる視点から持論を展開。研究者による講演は、ともすれば専門分野に特化してしまいがちですが、一見関わりの薄い一般的な話題とエコテクノロジーを結びつけるユニークな論理構成は類を見ないもので、観覧者は圧倒的な情報量とユーモアにあふれた講演に魅了されていきました。
休憩をはさんだ後半は、本シンポジウムのメインイベントであるパネルディスカッションが行われました。参加者は記念講演を行った3人に、本年度本田賞受賞者である冶金学のヘルムート・クレメンス博士が加わり、当財団業務執行理事である角南篤政策研究大学院大学教授のモデレートによって、Sustainability(持続可能性)をテーマとした自由でダイナミックな議論が繰り広げられました。
冒頭、体調不良で止むなく欠席したヘルマン・ハーケン博士(第13回本田賞受賞)からのメッセージが代読された後に行われた、各分野の第一人者であるパネリストたちの議論は、1時間半という短い枠のなかではとても収まりきらないもので、「知の巨人」たちの議論はどこまでも真摯かつ率直で、緊張感あふれるものでした。
1927年ドイツ生まれ。1992年第13回本田賞受賞。シュトゥットガルト大学名誉教授。元ドイツ科学財団顧問
35回記念シンポジウムに際し、心からのお祝いと、皆様方への想いを送りたいと思います。非常に大事なイベントと聞き、参加を楽しみにしていたが、病気になってしまい欠席します。私はお話しようと思っていたサスティナビリティとシナジーに関して申し上げたいと思います。
政治の当事者として世論を形成することは不可欠です。シナジーシステムのたくさんの例からもわかります。新しい発展の先駆者として、小さいが活動的なグループの影響力は決定的なものになり、地球上の生命の持続可能性を目指す政治において、大小合わせてすべての国家間の協力につながります。これはまさに本田財団の活動の重要性を明白にしています。心から皆様方、財団のさらなる成功をお祈りします。
人間社会の今後において、キーワードはTolerance(寛容)だと考える。寛容とは誰でも受け入れるということ、違いを受け入れることだ。
次に、誰もが必要とされていると感じられる社会システムの構築。
どこかで必要とされなくても、他の形で必要とされることがあるかもしれない。
そして、人間と他の霊長類の最大の違いであるお互いを教育しあう能力を活用することにあるだろう。
人類の成長の足跡である歴史から芸術作品までを共有の財産=パブリックドメインにするべきだ。
誰もが過去を振り返り、未来の礎を築く材料を手に入れられる機会があれば、社会は変わる。
同時に大切なのが、倫理についての教育だ。
次世代の若者に何が正しく、何が間違っているのか教えるには、単に既成事実を与えるのではなく、問題解決をするための考え方、手法を伝えるものでなければならない。
人が動物と大きく異なるのは「書ける(描ける)」能力があることだ。人類は洞窟の中に初めて文字を残し、絵を描いた。そして書籍が発明され、現代はITを活用している。我々はこうして、コミュニケーションの手法を開発し、人間の心の動きを把握しようと努力しているのだ。人間性を持った未来を構築するためには、まず我々が自分自身=人間そのものを理解しなければならない。
1957年オーストリア生まれ。2014年第35回本田賞受賞。レオーベン鉱山業大学(オーストリア)金属物理・材料試験学部長
持続可能性を考えるうえで、我々一人ひとりの記憶は人類の将来にかけがえの無い財産だ。そのインテリジェンスを何らかの方法で共有できる可能性はないだろうか。真の意味で人間性ある社会を目指すには、すべての人に未来と向き合う機会を与えること、つまり教育だ。先進国で施されている高い水準の教育が世界中に配分できるなら、多くの問題に解決の糸口を見出せるはずだ。