本田財団は、2015年11月18日に東京にてY-E-Sフォーラムを開催しました。これはベトナム、インド、カンボジア、ラオス、ミャンマーの各国で本田財団が展開しているY-E-S奨励賞の受賞者たちの参加の下、地域の課題認識、その解決に科学技術が果たすべき役割や、国境を越えた協力関係の構築などについて、日本を含むアジアの若手科学者・エンジニアが中心となって議論を行う場として企画されました。
今回は「エコテクノロジーで環境汚染に取り組む」をテーマに、Y-E-S奨励賞受賞者によるプレゼンテーション、日本におけるトップレベルの環境課題研究者2名による基調講演、パネルディスカッションを実施。また、本フォーラムに合わせて研究ポスターコンテストを開催し、応募者らによるプレゼンテーションと表彰式も行われました。
◎Y-E-S奨励賞受賞者によるプレゼンテーション
5カ国のY-E-S奨励賞受賞者が登壇し、それぞれの出身国が抱えている環境問題についてプレゼンテーションを行いました。ベトナム代表は家庭・工業における汚染水使用の現状、インド代表は大気汚染抑制の取り組み、カンボジア代表は地下水の砒素汚染問題、ラオス代表は廃棄物処理管理、ミャンマー代表は廃棄物の再生エネルギー利用について、それぞれ20分の持ち時間で熱のこもったプレゼンテーションを披露。会場からは積極的に質問の手が上がりました。
プレゼンテーションを行うインド代表
会場参加者からも熱心な質問が寄せられた
◎基調講演
ランチタイム後に行われた基調講演は、大阪大学名誉教授の藤田正憲博士(水質管理/生物環境工学)と、東京大学名誉教授の安岡善文博士(リモートセンシング/環境工学/空間情報学)の2名が登壇。藤田博士は日本の水環境技術の歩みを切り口に、微生物を利用した水浄化技術などを紹介。安岡博士はリモートセンシング(遠隔測定技術)の気候変動観測への応用を解説。環境問題の解決策として日本の最新の知見に触れられる、貴重な場となりました。
藤田正憲博士 大阪大学名誉教授
安岡善文博士 東京大学名誉教授
◎パネルディスカッション
基調講演終了後、休憩をはさんでパネルディスカッションが行われ、Y-E-S奨励賞受賞者5名と基調講演を行った藤田博士、安岡博士が登壇しました。当財団業務執行理事である政策研究大学院大学教授の角南篤博士によるモデレートで、アジア各国での環境課題とその解決策について議論が行われました。
Y-E-S奨励賞受賞者の1人は「環境問題はローカルで直面する問題であるが、グローバルな取り組みと紐付けていくことが課題解決の糸口になる」と指摘。これを受けて安岡博士は「世界規模での研究活動が地域に反映される仕組みが世の中になく、この構築は重要だ」と語りました。また、藤田博士は「先進技術は時として視野が狭くなってしまう。大気・水質汚染といった複雑な問題は実験と現実を注意深く見る必要がある」と指摘されました。角南博士の進行は会場の参加者まで巻き込んでの自由な意見交換に発展し、有意義なディスカッションとなりました。
パネルディスカッションの様子
モデレーターを勤めた、
角南篤博士 政策研究大学院大学教授
◎研究ポスターコンテスト
本フォーラム開催にあたり、環境問題をテーマとした研究ポスターコンテストが実施されました。会場には事前審査を通過した24組のポスターが掲示され、主催者による最優秀賞、優秀賞、フォーラム参加者の投票による観客賞が選出されました。ランチタイムを兼ねた観覧時間では、会場の各所でポスターの制作者とフォーラム参加者が議論する姿が見られました。
最優秀賞を受賞したMohamed Ateiaさん(東京工業大学)
優秀賞と観客賞を受賞した亀井樹さん(山梨大学)
会場内ではポスター制作者とフォーラム参加者の議論が活発に行われた
◎Y-E-S Forum 2015 実行委員会メンバー
本フォーラムは各国のY-E-S奨励賞受賞者たちがボランティアで企画・運営に携わりました。
▼ベトナム
Nguyen Trung Kien
2006年ベトナムY-E-S奨励賞受賞者
ハノイ工科大学研究員
Le Nguyen Kim Hai
2010年ベトナムY-E-S奨励賞受賞者
TTT建設&トレーディング株式会社購買マネージャー
Ngo Khac Hoang
2013年ベトナムY-E-S奨励賞受賞者
仏 パリサクレ大学修士課程
▼インド
Rohit Singh Sahani
2009年インドY-E-S奨励賞受賞者
ボストンコンサルティンググループ シニアアソシエイト
Mayur Rastogi
2011年インドY-E-S奨励賞受賞者
シポヤ社ファウンダー
Nishita Mohan
2012年インドY-E-S奨励賞受賞者
米 ハーバード大学博士課程
▼カンボジア
Sok Sikieng
2008年カンボジアY-E-S奨励賞受賞者
フリーランスWeb Developer
Nget Rachana
2013年カンボジアY-E-S奨励賞受賞者
京都大学修士課程
▼ラオス
Vernsone Phengsoulith
2008年ラオスY-E-S奨励賞受賞者
ラオス国立大学講師
Manyda Phothirath
2010年ラオスY-E-S奨励賞受賞者
Lao Transport Engineering Consultant 橋梁技術者
▼ミャンマー
Ein Kaung
2014年ミャンマーY-E-S奨励賞受賞者
SMART Group インターン
◎実行委員会メンバーが川崎エコタウンを視察
Y-E-S Forum 2015を開催した翌日の11月19日、実行委員会のメンバーが日本の環境保全技術を見学するために、川崎市の川崎エコタウンを視察しました。川崎市担当者より川崎市の沿革や現在のエコタウンプロジェクトの概要説明を受けた後、難再生紙リサイクルや再生トイレットペーパー生産ラインを見学。実行委員会メンバーは訪れた先々で熱心な質問を寄せ、予定時間をオーバーするほど充実した見学機会となりました。