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国際シンポジウム2007
渡海議員、「日印協力関係の拡大を通じたアジア全体の発展に期待」

基調講演

「技術・イノベーションと起業家精神の連携」と題した本田財団・CII共催シンポジウムが2月14日ニューデリーで開かれた。その基調講演を行った渡海紀三朗衆議院議員(自由民主党科学技術創造立国推進調査会長)は、近年、世界経済のグローバル化、知識駆動型経済の発展を受け、OECD諸国のみならず、中国やインドを含むBRICs諸国でも、イノベーションの名を冠した国家政策が続々と打ち出されている、とまず指摘した。日本政府も昨年3月、第3期科学技術基本計画を閣議決定した。この計画は「環境と経済の両立」を可能とする持続可能な発展を目指し、持続可能な経済・産業を実現するための政策目標として「イノベーター日本」を掲げ、関連の研究開発投資の強化と制度の改革を図っている。渡海議員によれば、これは昨秋発足した安倍政権が策定中の、2025年を目標とする長期経済成長戦略「イノベーション25」プログラムの柱となる計画であり、厳しい財政状況のなか第3期計画(2006年~2011年)のために総額25兆円の研究開発予算を計上した。
渡海議員は続けて、急速なグローバリゼーションの進行のなか、イノベーションも人材確保も一国の枠内で完結させることは難しくなっていると指摘し、さらなる技術交流・人材流動化の必要を訴えた。昨秋のインド訪問の際、インド人材の優秀さに感銘を受けインド経済の将来性を確信したという渡海議員は、これまで日印間の交流は歴史的にも地理的にも十分とは言えないが、今後は両国の産官学のあらゆるレベルで協力関係の拡大・深化が必要だ、と強調した。
渡海議員によれば、協力強化の上で重要なのは、環境保全に配慮した経済成長なくしてアジアの持続可能な発展はあり得ないとの認識の共有である、と言う。そうした意味で、この地域の環境・エネルギー・資源問題の解決に向けては、これらの「エコテクノロジー」を考える産業技術分野における国境を超えた協力体制が不可欠であり、インドと日本はそのような取り組みの牽引役となるべきである、として講演を締めくくった。

特別講演

本田技術研究所基礎技術研究センター担当の川鍋智彦専務取締役は「ホンダの技術革新への挑戦」と題した特別講演を行った。川鍋氏は、技術は人々の願いや夢を叶えるものでなければならないとした上で、自動車排気による深刻な大気汚染対策として1972年に完成させたCVCCエンジンこそホンダの歴史を画す大きな出来事であり、最新の「ゼロ排気」エンジンもその延長線上にある成果だ、と指摘した。さらに持続可能な発展は国を問わず21世紀の人類全体が直面する課題であり、「エコテクノロジー」実現への取り組みが課題解決のために不可欠である、と述べた。

歓迎の挨拶

これらの講演に先立ち、マヒンドラ&マヒンドラ社技術研究開発担当副社長Arun Jaura博士が歓迎の挨拶に立った。博士は商業利益の追究が技術の進展を促し、新たな方法で新しいことを行うイノベーションを起こし、付加価値の創造につながると述べ、世界的企業の背後には必ず技術とイノベーションがある、と指摘した。その上で世界的なエネルギー危機の時代にホンダが行ってきた技術経営は他に類を見ないユニークなものだと指摘した。
Jaura博士は続けて、イノベーションにおいても起業家精神においても技術が主役であるが、顧客に価値をもたらすという点ではイノベーションの方が優れた方法であると述べ、その意味では技術に限らず、新しいビジネスモデルの探求やテストの必要性がもっと強調されてよい、と述べた。そして最後に、技術もイノベーションも社会全体の発展になくてはならない原動力である、CIIでは技術開発や知財管理を通じて、技術・イノベーション・起業家精神の総合的発展に結びつけていきたい、として挨拶を終えた。

セッション総括

開会セッションの総括はHero Honda Motors代表取締役Pavan Munjal氏(CII国立技術・イノベーション委員会前会長)が行った。Munjal氏は、今日、技術・イノベーション・起業家精神が世界の到る処で発生し、相互に結合していく様はまことに驚くべき光景であり、こうした結合が富の創造や経済の発展、ひいては人々の生活水準の向上になくてはならないものとなっている、と指摘した。
その上で、この本田財団・CII共催シンポジウムの目的として、技術・イノベーション・起業家精神の見事な統合事例としてホンダをインド企業に紹介すること、そしてグローバル化した世界にあって技術とイノベーションを企業経営に生かす方策を政策面から討議することを挙げた。
最後にMunjal氏は、急速な変化を続ける経済市場にあって、他社に先駆けた製品・工程のイノベーションは企業の至上命題となっているが、この意味でインドは真に「イノベーション主導」の時代に入った、と総括した。

テクニカルセッション

ホンダを事例として企業における技術経営を扱ったセッションでは、元本田技術研究所主席研究員で、現在一橋大学大学院国際企業戦略研究科客員教授を務める小林三郎氏が、本田技術研究所の仕事は単に技術の研究開発に留まらず、人間と人間的価値の研究の場でもあることを強調した。
テクニカルセッションの総括を行ったCII技術部部長Anjan Das氏は、CIIは科学技術省と協力して若い世代のイノベーション促進に乗り出していると同時に、製造業のイノベーション達成度を測り、革新意欲を促すためにイノベーション・インデックスを公表しようと考えている、と述べた。
Das氏によれば、日本発明協会(JIII)が設立したInternational Foundation for Invention Promotionには約35ヶ国が参加しているが、同基金では毎年International Exhibition for Young Inventors(IEYI)を開催している。今年はインドがホスト国で、CIIのInternational Engineering and Technology Fair(IETF)と同時開催の予定だと言う。

特別展示

本会議後、会場ではホンダの先進技術がいくつか紹介された。紹介されたのは、衝突試験合格・型式認定取得済みの燃料電池乗用車「Honda FCX」、ホンダ初の商用ジェット機「Honda Jet」、消費エネルギーを従来の結晶シリコン系太陽電池の半分に抑えることに成功した次世代型太陽電池、農業廃棄物から精製したバイオエタノール燃料、そして人間と同様の複雑な動作ができる先進のヒューマノイド・ロボット「ASIMO」である。
2007年2月14日ニューデリーにて

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