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※受賞者・ご来賓の所属・役職・プロフィール内容は受賞当時のものです。

2021年本田賞 業績解説

神経難病との⻑きにわたる戦い

ベナビッド博⼠が実⽤化に成功した脳深部刺激療法(DBS: Deep Brain Stimulation)は、 パーキンソン病による不随意運動の抑制と運動機能の回復に⼤変効果的であり、患者の⽣ 活の質を劇的に向上させています。現在までに世界中で 15 万⼈が DBS の⼿術を受けたとされています。
パーキンソン病は進⾏性の神経難病です。全⾝の筋⾁に運動の指令を伝える神経伝達物 質(ドーパミン)が脳で⼗分に作られなくなることが原因と考えられています。病気が進むにつれて体が震えたり筋⾁がこわばったり、本⼈の意思に反して体が動いてしまう不随意運動の症状が強く出ます。そして、細かい⼿作業や歩⾏が困難になるなど⽣活に⽀障をきたすようになります。DBS が実⽤化されるまで、その治療は「凝固術」と呼ばれる脳⼿術と、ドーパミンの減少を補う薬の投与が主でした。
凝固術はパーキンソン病によって過剰に働くようになってしまった脳の⼀部(視床また は淡蒼球)の神経細胞を熱で破壊し、運動機能を正常化させるものです。1947 年に開発され 1950〜60 年代にかけて盛んに⾏われました。

DBS 確⽴までのあゆみとこれから

凝固術には脳の⼀部を熱で破壊し、元に戻すことができないという点ではリスクがあり ます。そのため⼿術数が減り、ドーパミン補助薬による治療が⾏われるようになりました。しかし投薬治療はパーキンソン病の初期にはよく効くものの、病気の進⾏に従って効果が薄れ、思い通りに体を動かせない時間が長くなるという難点があります。
凝固術を施す脳の深部は、従来危険な場所と考えられてきました。破壊する場所を誤ると、障害や合併症、望ましくない副作⽤を引き起こしてしまうからです。1980 年代からより安全な⼿術法を模索していたベナビッド博⼠は、この領域を電極で刺激を与える⼿術法を着想しました。研究は脳の深部に 2 ミリ間隔で 5 本の電極を並⾏に設置し、それぞれの神経核に埋め込むことから始まりました。各電極から個別に電気を流し、最適な刺激場所の探索を繰り返した結果、130Hz の⾼周波での刺激が、神経組織を破壊することなく高い治療効果がある ことを発⾒しました。
そして、1987 年、重度のパーキンソン病患者に世界初の視床刺激療法を、1997 年には同じく視床下核刺激療法を実施。5 年後も経過は良好で、それ以降 DBS はパーキンソン病の主要な治療法として定着しました。またドイツではうつ病、アメリカではアルツハイマー治療にと、薬物治療だけでは改善されないその他の神経・精神疾患にも DBSは用いられています。

図1
図2
ベナビッド博⼠は現在、パーキンソン病の進⾏を止めようと脳深部の近⾚外線療法に取り組んでいます。これは⼤脳基底核にある神経細胞(正確にはそのエネルギー⼯場であるミトコンドリア)に、頭蓋内に設置した装置から近⾚外線を照射して直接働きかけること で本来の機能を回復させ、治癒を促そうというものです。
また、もう一つのアプローチとして、四肢⿇痺により歩⾏困難となった患者さんのため に、脳の信号を捉えて四肢をサポートする外⾻格スーツ(エクソスケルトン)とブレインマシンインターフェースの研究も進めています。 このように、ベナビッド博⼠は⾃ら考案した治療法にこだわることなく、病にかかった ⼈の⽣活の質(Quality of Life)を向上させることを最優先し、様々な⾓度からより優れた治療法を模索し続けているのです。
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