Home本田賞受賞者一覧2009年受賞者

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※受賞者の所属・役職・プロフィール内容は受賞当時のものです。


記念講演録PDF

(財)本田財団(設立者:本田宗一郎・弁二郎兄弟、理事長:川島廣守)は2009年の本田賞を、世界初の子宮頚がん予防ワクチンの開発に貢献したオーストラリア・クイーンズランド大学教授のイアン・フレイザー博士(Ian Frazer)に授与することを決定した。同博士は30回目の本田賞受賞者となる。

子宮頚がんは女性特有の病気としては乳がんに次いで死者数が多く、毎年世界で50万人が発症し、27万人が命を失っている。その約8割は健康診断制度が整っていない発展途上国の女性である。フレイザー博士の技術を用いて開発された子宮頚がん予防ワクチンは、2007年からオーストラリアや米国で公的助成による接種が開始されるなど、現在では世界100ヵ国以上で使用されている。同ワクチンは人類ががんを制圧した初めての事例とも言われ、公衆衛生界の大発見と称されている。

子宮頚がんの原因は「ヒト・パピロマ・ウイルス」(HPV)であることが判明している。このHPVの中で、知られているだけでも約15種ががん発症につながる可能性が高いハイリスク種で、特にHPV16型と18型は世界で発症した子宮頚がんの約7割から検出されている。1983年、ドイツがん研究センターのハラルド・ツア・ハウゼン教授(Harald zur Hausen=2008年ノーベル生理学医学賞受賞者)のグループがこの16型遺伝子を抽出し、子宮頚がんの原因であることを証明。以来、世界の研究者がワクチンの開発に取り組んできた。フレイザー博士の技術を用いて開発されたワクチンは、HPV16型と18型への抗体を作るもの。

フレイザー博士と同僚の故・周健博士(Jian Zhou)は、HPVの外皮である「カプシド」を残しつつ、中身を無害なタンパク質系の遺伝子に組み替えるという独創的手法を用いて、接種する人体への副作用がないワクチンの基礎を築いた。世界では、同博士の基本技術を採用した米国メルク社と英国グラクソ・スミスクライン社がワクチンを開発・生産。公的助成制度を導入し、これらワクチンの普及を図っている国々も多い。

フレイザー博士がワクチンの基礎技術開発に駆使した最先端のエンジニアリング技術と、その成果を持って世界の多くの女性の生命を救済、さらには、人類という種の保存にも貢献していることはエコテクノロジー※具現化の一例であり、本田賞にふさわしいものと考える。

第30回本田賞授与式は、2009年11月17日に東京の帝国ホテルで開催され、副賞として1,000万円(約12万5,000豪ドル)がフレイザー博士に贈呈された。博士はこの副賞を所属する大学の研究チームに寄付する意向を示している。

※ エコテクノロジー(Ecotechnology):文明全体をも含む自然界をイメージしたEcology(生態学)とTechnology(科学技術)を組み合わせた造語。人と技術の共存を意味し、人類社会に求められる新たな技術概念として1979年に本田財団が提唱。

イアン・フレイザー博士の略歴:

生まれ
1953年1月6日 スコットランド・グラスゴー市生まれ(56歳)*オーストラリア人

学 歴
1974年

エジンバラ大学病理学部卒業(スコットランド)
1977年
エジンバラ大学薬学手術部卒業(スコットランド)
1988年
メルボルン大学薬学博士課程修了

職 歴
1977年

ルードランズ病院常駐幹部(スコットランド・ハディントン市)
1978年
王立病院腎臓医療班常駐幹部(スコットランド・エジンバラ市)
1980年
王立病院腎臓医療班研修医(スコットランド・エジンバラ市)
1981~85年
メルボルン・ウォルター・エリーザ・ホール協会上席研究員
1985~99年
ブリスベン・プリンセス・アレクサンドラ病院局長
1989~93年
クイーンズランド大学薬学部助教授
1991年~現在
クイーンズランド大学がん免疫学研究所(現ディアマンティナ協会)局長
1994年~現在
クイーンズランド大学薬学部教授

受賞歴
2006年:

ニューヨークがん研究協会ウィリアム・コーリー・メダル、王立病理医科大学名誉研究者賞、今年のオーストラリア人、今年のクイーンズランド州人
2007年:
ノバーティス賞(臨床免疫学・リオデジャネイロ)、国際偉業サミット金賞、国際生命賞(科学研究分野)、メルク・シャープ・ハワード・フローレイ・メダル、クラニーズロス賞(科学技術工学アカデミー)
2008年:
バルザン賞(予防薬)、ラマシオッティ・メダル、(オーストラリア)総理大臣賞(科学)、米皮膚病学アカデミー・リアグラバー皮膚病理学賞
2009年:
オーストラリア医学協会金賞、ゴールドハロルド医薬健康賞

現公職
1988年~

王立エジンバラ医学校・特別研究員
1989年~
オーストラリア王立病理医学校・特別研究員
2002年~
オーストラリア企業役員協会・特別研究員
2003年~
オーストラリア科学技術工学アカデミー・特別研究員
2004年~
オーストラリア科学アカデミー・特別研究員

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