2016年12月06日
「世界調査で分かった健康長寿の食べ方上手」
2016年12月6日 コートヤード・マリオット銀座東武ホテル
予防栄養医学研究の第一人者として活躍する家森氏は、1980年代からWHO(世界保健機関)に提案して世界25カ国61地域の食生活調査を開始。24時間分の尿を解析することで摂取した栄養素を明らかにする独自手法を開発し、食生活と健康の相関関係の研究を進めました。
その結果、抗酸化栄養素である大豆や野菜と、タウリンを多く含む魚を多く食べることで、高血圧症やガンの抑制作用があることを発見。「大豆や魚をふんだんに取る和食のおかげで、日本人の長寿は保たれている」と解説しました。
ただし、長寿であっても健康寿命が短い点が課題であることを指摘。大豆や魚類を塩分が多い味噌や塩漬けといった伝統食で摂取していることが原因だと解説しました。改善方法として兵庫県で10年にわたって取り組んだ健康食の普及活動を紹介。米食、大豆や日本古来の伝統的食材、減塩を奨励した結果、1日12gだった平均塩分摂取量が2g削減され、血圧や中性脂肪などの各指標が大幅に改善されました。
大豆イソフラボンやカスピ海ヨーグルトの効能を日本に紹介してきた家守氏。その軽妙な語り口に会場からは笑いが起こるなど、参加者は和やかな雰囲気のなか食生活改善の重要性を学びました。
家森 幸男氏
武庫川女子大学国際健康開発研究所 所長
2016年09月23日
「産学連携によるイノベーションの創出~人間性あふれる文明の創造へ~」
2016年9月23日 コートヤード・マリオット銀座東武ホテル
TLOとはTechnology Licensing Organization(技術移転機関)の略称であり、大学の研究者が産み出した研究成果を特許化し、民間企業などに技術を移転する産学連携の橋渡しをする組織のこと。山本氏は世界における産学連携の事例としてシンセサイザーや検索エンジン、音響システムなどの基礎技術が大学発であったことを紹介。産学連携が盛んな米国では大学は知的財産の生産工場の役割を担っており、雇用創出や中小企業支援につながっていると説明しました。
日本では技術移転の取り組みで大学間の格差が広がるなか「日本の新規ライセンスは過去4年で2倍近くに増加。技術移転先進国である米国との差はあるものの、決して遅れているわけではない」とし、今後、国内産学連携のイノベーションを加速させるための提言として、技術移転ノウハウを持つ人材の育成や基礎研究の事業化を促進させるためのファンド創設、大企業がベンチャー投資を促す税制優遇策の必要性等を訴えました。最後に「共同研究や論文執筆の域を超え、大学は産学連携で産業界にどう寄与できるかを真剣に考え始めている」と話しました。
山本 貴史氏
株式会社東京大学TLO 代表取締役社長
2016年06月30日
「僕はミドリムシで世界を救うことに決めました。」
2016年6月30日 コートヤード・マリオット銀座東武ホテル
出雲氏は講演の冒頭で、大学生時代に訪れたバングラディシュで目の当たりにした人々の栄養失調が、研究へのモチベーションになったと語りました。そして、ワカメやコンブと同じ藻の一種でありながら、植物性と動物性のたんぱく質を併せ持つミドリムシの可能性に着目。2005年に世界で初めて食用屋外大量培養に成功したことを振り返りました。
一方、起業後2年間で500社に行った営業活動が実らず倒産危機に陥っていたことや、501社目に出会った伊藤忠商事の協力で事業化が軌道に乗った逸話を引き合いに、将来を担う若者・学生・大学の挑戦を支えるためには、社会の後押しが必要だと指摘。「大企業はオープンイノベーションの重要性を認識している。それを発展させるにはリスクをチャンスと捉える前向きな気持ちで、若い研究者や大学の可能性に積極的な投資をしてほしい」と訴えるとともに、「例え成功率が1%だとしても試行回数と適切な科学技術があれば、イノベーションを起こせる」と主張。
講演の最後、2020年までにミドリムシを使ったジェット燃料で旅客機を飛ばすと宣言。会場は大きな拍手に包まれました。
出雲 充氏
株式会社ユーグレナ 代表取締役社長
2016年03月10日
「イノベーション;日本のイノベーションをいかにして活発にするか」
2016年3月10日 コートヤード・マリオット銀座東武ホテル
イノベーション政策、技術革新の経済分析、競争政策の経済分析が専門である後藤氏は、講演の冒頭でイノベーションに対するイメージが国によって異なることに触れました。日本語の翻訳で”技術革新”とされていることから、従来のテクノロジーを圧倒的に凌駕する成果を指すイメージが強い一方、米国では技術レベルよりも社会的にインパクトが大きなテクノロジーをイノベーションと指すことを紹介。製品(プロダクトイノベーション)と生産方法(プロセスイノベーション)とも、価格・コスト以上の価値や利点を持たなければ市場に受け入られないと説明しました。
また、日本のイノベーション競争力を測る指標として論文の引用度を挙げ、世界第6位から現状を打破するには、大学や公的研究機関での研究開発の促進が重要であり「都道府県の公的試験研究機関の活用は地方創生のカギを握る」と語りました。そのうえで、日本のイノベーションの活性化に向けて「特許侵害から開発者を守る仕組み」と「技術開発競争を進める独占禁止法の効果的な運用」の両方を用いた創造的破壊を促す必要があると指摘しました。
後藤 晃氏
東京大学名誉教授