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懇談会レポート

2018年09月19日

第146回
「全身透明化の先に見えるもの」
2018年9月19日 コートヤード・マリオット銀座東武ホテル
 上田氏の専門であるシステム生物学は、生物学にシステム工学の考え方や解析手法を取り入れ、生命現象をシステムとして理解する学問分野であり、実験技術の開発は重要な活動の一つです。上田氏は生物を構成するすべての細胞の観察を実現するため、全身透明化の手法「CUBIC」を2014年に開発。これによって、生物の身体や臓器の細胞一つずつの観察が可能になりました。1細胞解像度の三次元画像データを作成できるようになり、人間の小指の爪ほどの大きさであるマウスの脳のデータは14テラバイトにもおよび、130万枚の撮影データを基にして作成した立体画像によって、マウスの脳は7,223万9,062の細胞で構成されていることが明らかになりました。今まで推測でしかなかった細胞数の実態が明らかになったのは、世界で初めてのことです。2017年には透明化を行うための化合物の販売が開始され、ガンの転移メカニズムや、未解明の部分が多いうつ病や統合失調症といった精神疾患の解明・治療方法の発見にも大きな期待が寄せられています。上田氏はCUBIC法の開発を振り返り、医学、化学、情報科学など分野を超えた研究者が集まって生まれたことを引き合いに、物理科学と生物科学は非常に近づいていると話しました。

上田 泰己氏
東京大学大学院医学系研究科 教授、

理化学研究所 生命機能科学研究センター 合成生物学研究チーム チームリーダー


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2018年03月27日

第145回
「持続可能な開発を支える科学技術への期待」
2018年3月27日 コートヤード・マリオット銀座東武ホテル
水資源工学分野の第一線の研究者であり、国連大学上級副学長として2015年に国連で採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」にも関与している沖氏は「持続可能な開発という言葉は矛盾していないか?」という根本的な疑問に対し、これまでの国際的な取り組みをひもときながら解説しました。 2001年に国連で採択されたミレニアム開発目標(MDGs)は2015年までに達成すべき目標として8つのゴールと21のターゲットを掲げました。沖氏は8つのゴールのうち達成できたのは「極度の貧困と飢餓の撲滅」「HIV/エイズ、マラリアその他疾病の蔓延防止」「環境の持続可能性の確保」の3つのみだったと指摘したうえで、経済発展が進む国では成果を上げたことに言及。2015年に国連で採択されたSustainable Development Goals(SDGs)に定められた17の目標を達成するためには、政府だけでなく民間企業がSDGsを経営に組み入れる仕組みを整えた点に触れ、「経済発展が止まれば持続可能性も止まってしまう。また、企業の発展には社会の安定が必要。企業は未来への投資としてSDGsにコミットしなければならない」と語りました。 また、沖氏はSDGsの推進において科学技術には単なる技術のInvention(発明)から社会を変革させるInnovation(革新)へと役割が変化しており、科学的知見に基づいた政策決定・企業経営が一層重要であることを説明しました。

沖 大幹氏
東京大学生産技術研究所教授、国連大学上級副学長


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