2025年10月07日
第158回
「宇宙のはじまりの「非常識」 〜唯物論から唯空論へ〜」
2025年10月8日 コートヤード・マリオット銀座東武ホテル
「宇宙のはじまりの「非常識」 〜唯物論から唯空論へ〜」
2025年10月8日 コートヤード・マリオット銀座東武ホテル
素粒子物理学者である浅井氏は、宇宙の根源に迫る「ヒッグス粒子」の発見に大きく貢献し、欧州原子核研究機構(CERN)による世界最大の加速器実験を通じて、物質の起源を解き明かす国際研究をリードされています。
講演では「なぜ“無”から宇宙が生まれたのか」という根源的な問いに対し、「空(くう)」こそが宇宙創生の主役であるという唯空論的世界観が示されました。浅井氏は、最新の知見を交えながら、ビッグバン以前の宇宙の姿、時間と空間の本質、そして真空に潜む情報やエネルギーの存在など、物理学の常識を覆すような視点を交えながら解説。特に注目すべきは、時間や空間そのものが構造を持ち、重力とはその歪みの現れにすぎないという考え方や「物質=情報やエネルギー」であり、情報やエネルギーそのものが物理的実在として存在し得るという現代的な解釈は、参加者の大きな関心を集めました。
また、日本が世界に誇るニュートリノ観測施設「スーパーカミオカンデ」にも触れ、そこで生まれる研究成果は、素粒子物理学の定説を塗り変え、新たな物理の扉を開く可能性を秘めていると紹介。さらに、医療・放射線技術といった産業分野における高エネルギー加速器の応用例を通じて、「一見無意味に見える研究であっても、長期的には実用化される可能性が高い」と語り、基礎研究と産業応用の橋渡しを担う人材の重要性について指摘しました。講演の最後には、参加者からの質問に答え、「まだまだわからないことが多くある。その、“わからなさ”こそが、これからの大事な学問分野になっていく。矛盾があるということは困ったことでなくて、そこに何か新しいことがあるに違いない、むしろ良いことだ」と今後の可能性と期待を力強く述べられました。
浅井 祥仁 氏
大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構 機構長

2025年07月08日
第157回
「量子ドット研究のフロンティア ー その誕生、進化、そして展望」
2025年7月8日 ホテルグランドアーク半蔵門
「量子ドット研究のフロンティア ー その誕生、進化、そして展望」
2025年7月8日 ホテルグランドアーク半蔵門
量子ドット研究は、19世紀の色ガラスの発見に端を発し、ディスプレイや細胞観察に用いられる蛍光マーカーへつながる「ナノ結晶の光学制御」と、半導体物理学に基づき、量子レーザーや量子コンピューターへつながる「人工原子のエネルギー制御」と大きく二つに大別されます。荒川氏は、1980年初頭に半導体中の電子を三次元的にナノメートル寸法で閉じ込める「量子ドット」の概念を世界で初めて提示しました。また量子ドットをレーザーへ応用することを初めて提案し、それ以降量子ドットの基礎研究から社会実装に至るまで、一貫して取り組んできた第一人者です。2006年には株式会社QDレーザを設立し、光通信や医療技術への応用を進め、2021年に同社は上場を果たしました。荒川氏は量子ドット研究の歴史を振り返りながら、「最初の論文発表から上場までに40年を要した。ディープテックの起業は依然として困難であり、技術の社会実装を実現するには、国の科学技術予算をうまく活用する必要がある」と指摘します。また、AIの急速な普及により、コンピューターのCPUとメモリの通信量が飛躍的に増加している現状を踏まえ、電気と光の働きを統合する「光電融合技術」が注目されており、量子ドットは、こうした技術を支える基盤として、量子コンピュータや量子通信といった分野で研究が進展していると解説。荒川氏は最後に、「量子ドットの論文出版数は40年前から今日に至るまで増え続けており、今後のさらなる進化に大いに期待している」と抱負を述べました。
荒川 泰彦 氏
東京大学 特任教授・名誉教授、本田財団 理事

2025年04月16日
第156回
「睡眠の謎に挑む~健やかな睡眠から始まるウェルネス~」
2025年4月16日 ホテルグランドアーク半蔵門
「睡眠の謎に挑む~健やかな睡眠から始まるウェルネス~」
2025年4月16日 ホテルグランドアーク半蔵門
人間は人生の約3分の1を睡眠に費やします。健やかな睡眠は健康と生産性の維持のために必須です。しかし「なぜ全ての動物が眠るのか?」「そもそも『眠気』の脳内での実体は?」といった根本的な疑問が未だ明かされていないことから、柳沢氏は「睡眠は神経科学最大のブラックボックスの一つ」と言います。講演では、まず睡眠研究の進捗で明らかになった事象を紹介。脳の扁桃体制御機能が弱まり感情のコントロールが難しくなる、アルツハイマー病の原因の一つと考えられる脳βアミロイドの負荷が増大して認知症リスクを高めるといった、睡眠不足による悪影響について解説しました。また、柳沢氏が1998年に発見した睡眠・覚醒を制御する物質「オレキシン」の研究経緯に触れ、不眠症治療薬であるオレキシン拮抗薬が従来の睡眠薬で見られる依存性や酩酊感といった副作用がないことを説明しました。講演の終盤では、現在取り組んでいる在宅睡眠脳波測定サービス「InSomnograf(インソムノグラフ)」の計測結果から、不眠を感じている人の66%は客観的不眠がなく、十分睡眠が取れていると感じている人の45%が睡眠不足であると言及。「自覚している睡眠時間や睡眠の質は当てにならない」との柳沢氏の言葉に、会場から驚きの声が上がりました
柳沢 正史 氏
筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構 (IIIS) 機構長・教授







