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懇談会レポート

2026年07月14日

第161回
「完全長cDNA解析事業-もう一つのヒトゲノムプロジェクト-」
2026年4月23日 コートヤード・マリオット銀座東武ホテル
菅野氏は、生命分子機械論という独自の視点を起点に、生命が自己増殖という特性を持つことや、細胞内でタンパク質が高密度に存在し、複雑な生命活動を支えていることを紹介。また、DNA二重らせん構造の発見や、「セントラルドグマ」の提唱など、分子生物学の発展を振り返り、遺伝子解析技術の進歩によって、がんの原因が遺伝子異常であると判明した経緯を解説しました。 さらに、膨大な遺伝子を網羅的に解析したいという、世界中の研究者(特にがん研究者たち)の強い総意から始まったヒトゲノムプロジェクトについて、アメリカが新しいシークエンシング技術の開発に注力したのに対し、日本は日米共通の柱に加え「cDNAの収集・解析技術の開発」を独自の柱として掲げた戦略の違いを説明。菅野氏が丸山和夫氏とともに開発した「オリゴキャップ法」は完全長cDNA解析を大きく前進させ、日本の研究を世界トップレベルへ押し上げる原動力となりました。 一方で、オープンな国際プロジェクトとして進められていたゲノム情報を巡り、米国等によるcDNA断片(EST)の特許申請に対し、日本側が通産省(現・経済産業省)主導の産官学プロジェクト(FLJプロジェクト)で対抗した経緯や、その後の特許ガイドライン改定に至った流れを語りました。最後に菅野氏は、ゲノム研究が疾患関連解析やシステム生物学へと発展し、生命科学と情報科学を融合した新たな研究領域へ広がっていると締めくくりました。

菅野 純夫 氏
一般社団法人柏の葉オーミクスゲート 理事長
東京大学 名誉教授
本田財団 理事

菅野先生.2026-7-14

2026年04月23日

第160回
「もしかする未来のモビリティ研究」
2026年4月23日 コートヤード・マリオット銀座東武ホテル
大口氏は、自身が交通工学の道へ進んだ経緯を振り返りつつ、道路交通における渋滞や環境問題の解決を目指してきた研究の歩みを紹介。燃費悪化と交通状況の関係、高速道路のサグ部で発生する渋滞のメカニズム、交通信号の最適制御などを具体的な研究成果を交えながら解説しました。また、内閣府のSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)など国の自動運転政策にも触れ、レベル2までの運転支援と、レベル3以上の自動運転は本質的に異なると説明。社会実装には、技術だけでなく、法制度や社会受容性を含めた検討が不可欠であると述べました。そのうえで、大口氏は「未来のモビリティは技術単体の進化では実現しない」と強調。自動運転が単に移動の快適性向上のみにとどまれば、都市が郊外に無秩序に拡大する可能性があると指摘。そこで必要となるのは、大量の交通データを活用し交通状況を予測・最適化する柔軟な交通マネジメントと、歩行者中心のまちづくりを結びつけて捉える視点の重要性を語り、さらにまとめとして、高速交通、都市内公共交通、ラストマイルを担う端末交通、そして自動運転技術を、地域ごとの文化や特性に応じて適切に都市へ組み込み、人間中心で持続可能なモビリティ社会の構築を目指すべきと提言しました。

大口 敬 氏
東京大学 生産技術研究所 人間・社会系部門 教授/副所長

講演録はこちら

大口先生.2026-4-23

2026年01月26日

第159回
「サクセスフル・エイジング」
2026年1月26日 ホテルグランドアーク半蔵門
高齢化が進みAIが急速に発展する社会で、より多くの人が幸福感や充実感をもって生きるための「サクセスフル・エイジング」の実現に不可欠な要素として、狩野氏は、①身体的健康(食事・運動・睡眠)、②心の健康、③社会とのつながりという3つの要素を挙げました。自身の医師としての臨床経験を踏まえ、終末期に「良い人生だった」と感じる基準は、社会的地位や財産といった外的な成功ではなく、「自己統合(やりたいことを十分に活かしきれたか)」「自己決定」「人生の意味」といった感覚が重要であるとも指摘しました。また、終末期における後悔の要因としては、「自分に正直に生きられなかったこと」「働きすぎたこと」「感情を表現できなかったこと」「友人とのつながりを維持できなかったこと」が主に挙げられると考察しました。また、健康寿命を延ばすための食事・運動法、認知症予防、社会とのつながりの重要性についても紹介し、加えて人生の終焉から逆算して現在何をすべきかを考える「バックキャスティング」の考え方にも触れました。 狩野氏は、異なる世代間で成功体験だけでなく「失敗談」を共有することで、より社会的なつながりが生まれ、結果として充実した感覚をもって人生の最期を迎えられる可能性が高まると話しました。講演の最後には、社会全体で多様な生き方を許容する新しい「型」を創造していくことが、特定の世代に限らず、すべての世代のウェルビーイング向上につながっていくと熱く語りました。

狩野 光伸 氏
岡山大学 副理事・教授
本田財団 業務執行理事

講演録はこちら

狩野先生.2026-1-26

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